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認知症の家族の介護者100人アンケート!認知症と診断されるまでの経緯や介護している現在の苦労を聞きました

公開日: 2023-05-22
更新日: 2023-05-22
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病院なび編集部では、認知症患者さんの介護を行っている方を対象としたアンケートを調査を実施しました。 どのような過程を経て認知症と診断されたか、介護している現在の状況について、介護者の方の生の声をお届けします。

高齢化の中で伸ばしていきたい「健康寿命」

歩く二人のシニア

内閣府から発表された令和4年(2022年)版の「高齢社会白書」によると、日本の65歳以上の人口比率は28.9%。ほぼ3人に1人が65歳以上という状況になっています。約40年後の令和47年(2065)には、この高齢化率はさらに伸び、「全人口の38.4%が65歳以上になる」と推計されています※1
もちろん、最近では65歳を過ぎても会社勤めをしていたり、マラソンなどを楽しんでいる60歳代の方も増えており、65歳以上=高齢者という定義は少し古いものになりつつあります。高齢となっても日常生活に制限がなければ、仕事もでき、趣味にも勤しむことができます。その意味では「健康寿命」という考え方がとても重要になります。

平均寿命と健康寿命の差

現在の平均寿命は、男性で81.47歳、女性で87.57歳※2。それに対し、高齢者白書に記載された健康寿命は。男性で72.68歳、女性で75.38歳。男性でおよそ9年、女性でおよそ12年の差があり、この間は日常生活に何らかの支障を抱えながら暮らしていくことになるのです。

※1:内閣府・令和4年版高齢社会白書
※2;厚生労働省・令和3年簡易生命表

健康寿命の大敵「認知症」

認知症イメージ

年齢が上がるにつれ、身体のあちこちに痛みを感じることはよくあることだと思います。
筋肉や関節の痛みは、装具を使ったり対症療法を行うことである程度解消可能な場合があると思いますが、脳の疾患である認知症が進んでしまうと、介護なしでは日常生活を送ることができなくなってしまいます。
また、認知症患者本人のみにとどまらず、介護をする家族にも大きな影響を及ぼしてしまう結果となり、関わるさまざまな人たちのQoL (Quarity of Life)を阻害することにつながってしまいます。
生活習慣の改善が認知症予防につながると言われているものの、「認知症の予防」を保証できる方法はありません。
現時点では、とにかくその兆候を早めに感知し、早期に治療を開始することで、長く認知機能を維持することが重要になります。
こうした背景のもと、病院なび編集部では、認知症患者さんの介護を行っている方を対象としたアンケートを調査を実施しました。

アンケート概要

  • 調査期間:2023年4月26日~27日
  • 調査方法:楽天インサイトの調査パネルを利用したインターネットアンケート調査
  • サンプル数:n=100
  • 対象者条件:
    • 認知症患者と同居もしくは近隣に居住している
    • その認知症患者の介護を、主に自分が中心で行っている

認知症患者さんと介護者である回答者の属性

認知症患者および介護者の属性

調査にお答えいただいた介護者の平均年齢は59歳、一方で介護を受けている認知症患者さんの平均年齢は85歳でした。介護者のおよそ25%が65歳以上であり、高齢者が高齢者の介護を行う「老々介護」の状態にあるようです。
認知症の重症度別では、「中等度の認知症」が最も多く37%、ほぼ同じ水準(33%)で「軽度の認知症」が続いています。
認知症患者さんの性別では、回答された105名の認知症患者(家族内に複数認知症と診断された患者さんがいる場合があり、n数を上回る)のなかで、82名 (78%)が女性でした。前述の通り、女性は平均寿命と健康寿命におよそ12歳の差があり、その間に認知症に苦しむ方が少なくないことがうかがえます。

最初に「おかしい」と思ったきっかけと対応

認知症患者さんをおかしいと思ったきっかけ

患者さんの異変に気づいたきっかけとして最も多く回答されたのは「最近の出来事を忘れていることがあった」(78%)でした。次いで「曜日や日付などがわからなくなることがあった」(63%)、「物の使い方の手順がわからなくなることがあった」(48%)が多く回答されました。
過去の出来事を忘れることはよくあることかもしれませんが、「最近の出来事を忘れる」というのは気づきのきっかけになるかもしれません。
また、ものの使い方がわからなくなる、曜日や日付がわからなくなるなど、これまで何の問題もなくできていたことができなくなってしまう、というのも特徴的なポイントのようです。
回答者一人あたり平均して5つの症状を答えており、「おかしいな」と思う症状が複数見られる場合も注意が必要です。

おかしいと思った時におこなったアクション

おかしいと思ったときにどのようなアクション取ったのかを尋ねたところ、7割の回答者が「お医者さんに相談した」と回答しました。
同時に、2割以上の対象者が他の家族に相談したり、インターネットで調べるなどの行動を取っているようです。
また、「何かしたいと思っていたが何もできなかった」「特に何もしなかった」方もも5-6%いたようです。

おかしいと感じたときに知りたかった情報

患者さんがおかしいと思った当時に知りたかった情報としては、「症状を進行させないための方法」が最も多く回答され、6割以上の介護者が知りたかったと回答しています。その症状が「年齢によるものか、病的なものか」の判別方法も、半数近い介護者が知り固かった情報として回答しています。
進行を食い止める方法や病気かどうかの判別は、やはり医師による専門性が必要になります。少しでも早く、適切な方法を採るためにも、早期に医療機関を受診することが大切になります。

お医者さんに相談に行き、認知症と診断されるまで

最初にお医者さんに相談しなかった人が、受診をするきっかけとなったこと

最初におかしいと思ったときに医師へ相談しなかった対象者が、最終的に医師へと相談するきっかけとなったことについて質問したところ、半数近く(47%)が「おかしいと感じた症状の頻度、深刻さが増した」と回答しました。同様に、「他にもおかしいと思う症状が出てきた」も半数近くが回答しています。「おかしいな」と感じる頻度が増していたり、それを感じるエピソードが増える、それが最終的には医療機関に受診するきっかけとなっているようです。
また、患者さんから自覚症状の訴えがあったと答えた人はおらず、まわりの人が気づいてあげることが大切なようです。

最初におかしいと感じてから認知症と診断されるまでの期間

結果的には、半数近くが、最初におかしいと感じてから半年未満に認知症と診断されています。一方で、1年以上の時間が経過してしまっていた人も2割ほどいて、このタイムラグをできる限り短くし、少しでもおかしいと思ったら医師に相談してみる、それが早期発見と治療開始に必要になると考えられます。

介護に関する現在の苦労と医師に求めるもの

介護について現在苦労していること

介護に苦労していることとして最も多く挙げられたのは「自分の時間を取れないこと」であり、半数以上の対象者が回答していました。また、「買い物や料理などの食事の準備」、「主治医への付き添い」、「掃除や洗濯などの家事」について、4割を超える対象者が「苦労をしている」と回答しています。
何か不都合が出るものの、治療以外の日常生活は患者自身で行うことができる疾患とは異なり、時間や経済の面で介護者に大きな負担をかけてしまうのが認知症の特徴とも言えるでしょう。

令和3年高齢社会白書・介護者の介護時間

実際に、内閣府の令和3年の高齢社会白書※3では、要介護度が4や5など高い場合、介護者の半数から6割近くが終日介護に時間を割かれていると記載されています。
このように、認知症になってしまうと介護をしてくれる家族にも大きな影響を与えてしまいます。そのため、自分の認知能力に少しでも不安がある場合は、自ら医療機関に相談に行くことも検討していてはいかがでしょうか。

※3:内閣府・令和3年版高齢社会白書
認知症治療への満足度

認知症治療への満足度を聞いたところ、35%が「満足している」(「非常に満足している」と「やや満足している」の合計)と回答している反面、満足していない(「あまり満足してない」と「全く満足していない」)層も15%ほど存在しています。このような満足度調査では、6割が満足の基準とされることが多いのですが、認知症の治療に対する満足度は低いようです。

認知症治療を担当する医師への要望

認知症治療に関する医師への要望をたずねたところ、満足度が低くなってしまっている要因を垣間見ることができました。
「症状の進行の見通し」(31%)、「薬以外の治療法」(25%)、「薬の切り替えの提案」(23%)、「介護など日常生活の相談」(20%)について、2割以上の対象者が回答しています。また、「医師にはあまり期待していない」の回答も19%と、なかば諦めに似た回答をする対象者もいるようです。
認知症は不可逆(進行を遅くすることはできても、快方に向かうことはない)な疾患であり、治療により認知症の進行を抑えたいと感じつつも、そうできていない現状がうかがえます。

最後に:認知症は早期受診・早期治療開始が重要

認知症介護者の方への調査結果、いかがでしたでしょうか。
前述したとおり、認知症の進行を進めてしまうことは、患者さん本人の健康寿命を縮めてしまうだけではなく、まだまだ働いたり趣味を楽しんだりすることができる介護者さんの人生をも大きく巻き込んでしまうものとなります。
認知症の治療薬の多くは、MCI(軽度認知障害)や軽度の認知症患者さんに投与することで、認知機能の低下をできる限り遅くする効果が認められたものがほとんどです。つまり、症状が軽いうちに医師に相談し、早期に治療を開始することが大変重要になるのです。
近年では、特定のタンパク質の蓄積がアルツハイマー病と関連していることがわかり、その血中量を図ることで軽度認知障害の可能性を計るMCIスクリーニング検査ができるようになったり、そうした原因物質に作用する新薬の誕生も期待されています。
とにもかくにも、「おかしいな」と思ったら、まずは医療機関を受診し医師に相談することが重要です。