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第10回新型コロナウイルス感染症に関する調査 ~ 治療を行っている中規模以上の病院は60%。 ワクチン接種に4,000回以上協力した医師も ~

公開日: 2021-09-15
更新日: 2021-09-15
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今年7月以降、まず東京近郊で顕著になった感染者の急増は第5波として全国に広がり、必要な医療を受けられない事態が発生していると言われています。当社は8月末に、医療提供状況の実態を把握すべく通算10回目となる調査を実施致しました。新型コロナウイルス患者の検査・治療を行える医療機関はどれくらいあったのか、受け入れ拡大の可能性、開業医等の協力状況など、調査結果をまとめました。

第10回新型コロナウイルス感染症に関する調査の概要

調査目的

2020年3月以降、10回にわたって実施しているトラッキング調査の内、今回の8月調査を2020年の4月、8月、12月、2021年4月実施の調査結果と比較するかたちで、診療現場にいる医師の実感を掴み、医療機関の対応状況、医師の意識の変化を見る。

調査概要

当社サービスにご協力をいただく医師とのコミュニケーションサービス“Doctors Square”登録会員医師で、2020年3月の第1回アンケートに回答のあった815名を対象に実施しました。

1. 調査対象

Doctors Square登録会員医師のうち、2020年3月第1回アンケート調査に参加した方

2. 調査方法

インターネットアンケート

3. 調査期間

2021年8月24日 (火)~8月31日 (火)

4. 有効回答者数

533名(対配信数:65%)

5. 配信対象者の属性

全国の病院、診療所の勤務医及び開業医


詳しくは、下記及び調査結果の詳細をご覧ください。
調査結果レポートURL:
第10回調査結果(2021年8月実施)
※過去の調査結果

調査結果ピックアップ

新型コロナウイルス「第5波」では、9月に入り新規陽性者数こそ減少傾向に転じたものの、医療の逼迫が今も続いています。こうした深刻な状況を踏まえ、去る8月23日、国と東京都は都内すべての医療機関などに対し入院患者の受け入れや病床確保のための要請を行いました。
感染症法に基づく協力要請を国や都が行うのは初めてのことです。
では、その8月下旬時点で、実際に治療にあたっていた医療機関はどれくらいあったのでしょうか。

(1)実際に検査や治療を行っている医療機関

中規模以上の病院(100床以上)では「検査、治療ともに」行っていたのは6割、「検査のみ」が約3割でした。一方、診療所・小規模病院(100床未満)では「検査、治療ともに」が5%、「検査のみ」が約4割となっています。特に治療の実施については、医療機関種別により大きな開きがありました。

図1.医療機関で実際に検査や治療を行っているか
図1.医療機関で実際に検査や治療を行っているか

現在治療を行っていない医療機関にとって、コロナ患者受け入れの障壁は何なのでしょう。現在コロナ患者を受け入れていない理由を自由回答で尋ねました。

(2)新型コロナウイルス患者を受け入れていない理由(自由回答)

医師の回答からは、「病床、設備がない」「動線を分けられない、感染対策が十分にできない」「人員が足りない」といったものから、そもそも「診療科目が異なる」など、診療ニーズに対応できない環境やリソースの実情が浮き彫りとなっています。医療機関側には、受け入れたくても受け入れられない状況もあるようです。

<リスト1.新型コロナウイルス患者を受け入れていない理由(自由回答・抜粋)>
【病床、入院設備がない】

  • 入院施設がない(大阪・内科)(岡山・内科)(東京・内科) 他多数
  • 設備がない(福井・脳神経外科)(北海道・麻酔科)(和歌山・内科) 他多数
  • 無床診療所だから(神奈川・小児科)


【動線を分けられない、感染対策が十分に出来ない】

  • 動線が確保できないため(広島・内科) (大阪・内科)(東京・外科) 他多数
  • 動線が分けられない。ビル内にあるので換気の問題もある。近くに敷地や車を停めておく置く場所がない(大阪・内科)
  • 感染対策が十分にとれない(神奈川・耳鼻いんこう科) (愛媛・内科) 他多数


【診療所、開業医で対応ができないから】

  • 開業医では治療できない(岐阜・内科) (千葉・内科) 他
  • 余裕がない開業医で1人で診療(神奈川・内科)


【人員不足】

  • スタッフが少ない(香川・内科)(和歌山・内科)(福岡・脳神経外科) 他
  • 施設の人員不足(徳島・内科)


【感染リスク、クラスター発生リスクがある】

  • 感染リスクが高いから(茨城・内科)
  • 院内クラスター発生リスク(大阪・内科)


【患者がいない、需要がない】

  • そのような患者さんは来ない(愛知・内科)
  • 需要がない(神奈川・内科)

【診療科、施設種別が異なる】

  • メンタルクリニックなので(秋田・精神科)、内科ではない(兵庫・泌尿器科)、皮膚科だから(愛知・皮膚科) 他多数
  • 透析専門施設であるため(愛知・腎臓内科)、ケアミックス病院であるため(福岡・内科) 他多数


では、そういった医師たちは医療崩壊の危機を目の当たりにし、どのような思いでいるのでしょうか
全ての医師に対して尋ねた「医師個人としてできる/したいと思うこと」の回答を見てみましょう。

(3)医師個人としてできること/したいこと(自由回答)

直接治療はできなくとも、「ワクチン接種の手伝い」や「検査協力」などの後方支援、「宿泊療養・自宅療養者のサポート」、新型コロナウイルス以外の患者の診療にきちんと取り組むなど、それぞれの立場で様々な協力・サポートをしたい、あるいはすでにしている様子も窺えます。なかには、ワクチン接種に「4,000回以上」協力したという声もありました。

<リスト2. 医師個人としてできること(自由回答・抜粋)>
【ワクチン接種の手伝い】

  • ワクチン接種4000回以上してもうくたくた。 私の出来る事はしてるつもり。 眼科医で、勤務医で、給与もほとんど増えないけどこんなに接種してる医師は居ない。もうこれ以上頑張れない(兵庫・眼科)
  • 専門が眼科の為、検査や診療ができませんが、ワクチンの集団接種には積極的に参加(福岡・眼科)
  • 予防接種や後方支援活動(愛知・産婦人科)


【発熱外来・検査】

  • 発熱外来、ワクチン接種で目一杯協力(北海道・内科)
  • 抗原検査と、PCR検査を行う予定(神奈川・耳鼻いんこう科)
  • 診療検査を継続(熊本・糖尿病内科(代謝内科))


【協力したい】

  • 役に立てることはなんでもお手伝いしたい(奈良・脳神経外科)
  • 出来る事全てです(神奈川・皮膚科)


【日常の診察・医療を】

  • 自分の守備範囲の患者をしっかり診て治療していくこと(広島・泌尿器科)(広島・内科)
  • 今できる目の前の仕事に対して、いつもどおりにきちんと取り組む(愛知・糖尿病内科(代謝内科))(静岡・麻酔科新潟・循環器内科)(東京・糖尿病内科(代謝内科))他多数
  • 自身はリハビリ科なので、感染してADL低下した患者さんには、必要に応じてリハビリを提供していきたい(愛知・整形外科)


【宿泊療養・自宅療養者のサポート】

  • 可能な限り宿泊療養施設に出務(兵庫・内科)
  • 自宅療養者の診療、経過観察(大阪・内科)
  • 訪問診療の手助けをしたい(京都・外科)


自宅での療養を強いられた患者のサポートには、保健所との連絡・連携が不可欠ですが、「電話がつながらない」といった声も聞かれました。保健所や、都道府県が設置する「発熱相談センター」などの相談窓口は、どれくらい機能していたのでしょうか。

(4)相談窓口の機能

全体では相談窓口が《機能していると思う》が40%で、《機能していると思わない》の30%を上回っていますが、地域により大きな差があるようです。
第5波で感染者が急増した関東(一都三県)は、《機能していると思わない》が半数近くにも達しています。「保健所と連携をとりたくても電話がなかなか通じず連携がとれません」(東京・内科)といった声もありました。医師の実感の上でも、患者を振り分ける相談窓口のオーバーフローが関東で顕著に表れています。

図2.相談窓口は機能しているか
図2.相談窓口は機能しているか

本調査結果からは、新型コロナウイルス患者の受け入れが出来る医療機関は、数だけならばまだ余力があるものの、実際には施設・設備や人員等の問題から対応が難しいケースが多くある様子が見て取れます。 第6波への備えとして、必要な患者が必要な治療を受けられるよう、自宅・宿泊施設療養者の訪問、相談窓口のサポート、あるいは専用病床の設置など、協力できる/したいという医師の力を結集できる体制づくりが求められます。

新型コロナウイルス感染症に対する当社の取組み ~ 適切な医療を受けるために ~

当社が運営する医療機関検索サイト「病院なび」( https://byoinnavi.jp/ )は、身体に不調を抱え受診を希望する患者さんを中心に多くの方々にご利用を頂いています。そのなかには新型コロナウイルスへの感染が疑われる、不安を感じておられる患者さんのご利用も多くあります。当社では、医療崩壊を未然に防ぎ、また患者さんを二次感染などから守るべく各フェーズで次のような取組みを行っています。
これらのサービスは、すべて無料で利用することが出来ます。

● 医療機関を探す:「病院なび」のサイト内に、厚労省をはじめとする公的機関の窓口や情報をまとめた「新型コロナウイルスに関する問い合わせ窓口とよくある質問」を開設。オンライン診療が可能な医療機関も掲載しています。
● 症状を調べる:当社が運営する遠隔医療相談サービスに寄せられた匿名の相談を掲載している「医療Q&Aなび」( https://eknavi.com/ )では、新型コロナウイルスに特化した約3,000件近い相談事例を掲載した特集ページを設置、自分に似た症状から必要な対処や受診の必要性などを知ることが出来ます。
● 医師に相談する:受診の必要性など、ご自身で判断に困る場合には、必要に応じて、直接医師に遠隔から相談できる「病院なび医療相談サービスβ版」( https://byoinnavi.drsquare.jp/ )も提供しています。

新型コロナウイルス感染症に対する当社の取組み
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